久しぶりの本の感想です。

氷塊 大久保利通氷塊 大久保利通
(2011/06/17)
秋山 香乃

商品詳細を見る
秋山香乃さんといえば「五稜郭を落とした男」の山田顕義や「晋作蒼き烈日」の高杉晋作の描き方が
私的にとても好きな作家さんです。

松下村塾生たちのつながりを感じさせる会話や行動、若者達の高い志と迷い・・
そういうものがとてもうまく書かれていて、それは新選組を描いた「歳三往きてまた」などでもみられます。

でもこの本は主人公が「大久保利通」だけにほとんどはしゃいだ(?)場面はありません。
もちろん西郷隆盛と進めた改革への道のりは十分に書かれています。
ただこの二人は井上馨・伊藤博文のような朝まで遊ぶといった「陽気」な間柄ではないようで・・・

大久保・西郷が揃う時はキリキリとした緊張の場面ばかり・・・
これは薩摩人という国柄なのかもしれません。

お互いが分かり合っているとう信頼関係があったはずの西郷と大久保も新政府では
違う道を行くことに。

「若い勢力に振り回され政府が汚れていく」のをきらって西郷が鹿児島に戻ってしまう。
犬と共に山里に暮らす西郷のようすを聞き、大久保は思うのです。

『力も金もなくて何をどうするというのか。
 人は権力に比例してやれる範囲が大きくなる。だが前半は斉彬の庇護のもと、
 後半は力を握った大久保とと共に活動した西郷は、一度も権力を持たずに偉業を成せた。
 権力を必要としなかったわけではない。斉彬や大久保が持っていただけの話だ。
 だが西郷にはわからない。
 西郷には取り立てられて引き上げられた経験しかなく、這い上がったことは一度もないからだ。
 そういう苦労を知らぬ男だ。』

岩倉使節団として大久保・木戸・岩倉は旅立ち、条約改正には失敗
戻ってみれば居残り組はやりたい放題!
そして征韓論。

大久保は迷う、盟友西郷と闘うのか?
ここで大久保は三つのことを決心する。

闘うとしたら敗れたら自決する
闘いを避けて日本を見捨てたときも死ぬ
闘うことになり政戦に勝ったそのときは自分は「氷塊」となり独裁的に日本を導く

結局大久保は政戦に勝つ。

明治六年の政変の後各地に乱が続き十年には西南戦争の勃発。
その全てを冷徹に鎮めていく大久保はなるほど「氷塊」でした。

そして木戸四十五歳、西郷五十才、大久保四十九歳
維新の三傑は次々に消えます。


明治新政府での大久保は泥の中をあがくように頑張っていたんだなあと思います。
その功績のわりに人気がない人ですが、木戸と違って苦労人であることは間違いない。

「龍馬伝」で泰造さんが演じた大久保が思い出されます。

西郷と共に勇んで旅にでるが、他藩で話ができるのは斉彬側近と認められた西郷のみ。
自分はまるで従者にちかい扱い。
あまりに情けなくてこぶしで膝を打つ


名演技でした。


この本、長州人はほとんど出てきません(あたりまえ)
薩長同盟も一行で終わりでした。
木戸は認めてるけどソリ合わないという(笑)

木戸の使いで来た伊藤博文に

「木戸先生は、実に腹黒いようでごわす」
「いやそれは・・・なにを言われますか。」
「かようにお伝え願いましょうか。そう大久保が言っていたと」

というせりふがあります。

伊藤が帰って木戸にどう伝えたか想像するとおもしろかったです。

関連記事

コメント 0