「新選組血風録・総司燃え尽きる」 笹沢左保
2008/06/04(Wed)
1975年に発行されたときの題名は「剣士燃え尽きて死すー人間沖田総司」でした。
こちらのほうが内容に合っている気がしました。

この本の総司は土方歳三が嫌いです。
近藤勇からも心が離れていきます。

それだけ、ここのふたり(特に土方)は冷たいです。

総司が隊士の中で最後まで話せたのは山南敬助だけです。
新見錦を貸し座敷「山の緒」で切腹させるとき、近藤は介錯を総司とします。
そのとき総司は

「近藤さんは私を便利な人斬り包丁そのものだと思っている」

と感じたりしています。

総司も近藤とともに江戸を立つときは「近藤先生のためだけに存在する」とまで思っていました。
でも京に来て変わっていく近藤にすべてどうでもよくなってきます。
芹澤鴨を「暗殺」という形で葬ったとき、総司は芹澤は「敵」だったのかと自問します。
「敵」ではなく「近藤にとっての邪魔者」ではなかったかと。

沖田総司といえば「性格明るく冗談ばかり言って人を笑わせ、壬生寺の境内でよく子どもと遊んでいた」というのが通説です。
作者は『それは人前にみせる仮面に過ぎなかっただろう』と言い切ります。
大勢の人間を斬っている(それも暗殺など正当な理由のないものがほとんど)総司が根っから明るく笑っていたとしたらそれは狂人と変わらないというのです。

一理あると思います。
多くの「沖田総司話」では「人を斬る苦悩」まで踏み込むことは少ないように思います。
それは総司が近藤を父と、土方を兄として頼り守られている設定のため、精神的な苦悩は癒されていると見るからです。
総司が悩むのは「剣ひとすじの自分が病にて死ぬ」ということだけとされてきました。

しかし、ここの総司は孤独です。
土方歳三がたまらなく策士で、いやな奴です(苦笑)
近藤勇も歳三と共に「生まれながらの武士でない」ことがコンプレックスで、より「武士」であろうとあがいています。

山南敬助の脱走も土方の仕組んだことなのです。
明里の弟(偽)が大津の宿に山南を呼び出し待ちぼうけをくわせ、それを脱走としてしまう・・・

おまけに近藤と土方は「総司は病人だ。不治の病にかかっておる」「所詮は役立たずか」などと
語り合うんです(涙)

作者は総司の癒しとして二人の女性を登場させながら、二人とも死んでしまうという悲しい結末で
ちょっと救いのないお話でした。

新選組を描く多くの作家さんたちは過去に誰も書いていない姿を書きたいのでしょう。
「輪違屋糸里」も「多摩に帰って百姓したい土方歳三」が出てきました。
この本は「大名となる夢のためになんでする土方歳三」になっています。

土方スキーさんには腹の立つ小説だと思います。
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コメント
- 瑠華さんへ -
すごい、この本も読まれてましたか・・
そうですね勝之進とのラスト、総司の最後の意地でしたね。
近藤勇が「総司がいなくても勝之進がいる」と言うのがたまらなくくやしかったですから、やっぱりたおしてほしかった・・・

総司の「仮面」について、笹沢さんはきつい書き方でしたが、子どもの頃から他人に交じって生活しなくてはいけなかった総司の処世術としてありえる話だと思いました。
確かに笑って人を斬れてたら怖いです・・・
2008/06/07 08:28  | URL | なつ #-[ 編集]
-  -
中学生でこの本を購入してるのは、きっと自分くらいだろうな・・・笑

新選組の深みにはまってすぐの頃だったので、沖田総司の"仮面"にはちょっと戸惑ったけど。
なるほどなと思いながら読みました。

でも・・・確かに悲しくて寂しい結末。
勝之進とのラストが、唯一気の晴れると言えば晴れるシーンだったかも(^^;)
2008/06/05 23:28  | URL | 瑠華 #-[ 編集]
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